3度目の正直

今月末に、ギターの今村隆之さんとデュオコンサートを開催します。

メインの曲は、ブラジルの作曲家・ニャタリの《ギターとチェロのためのソナタ》です。

この曲を演奏するのは、今回で3回目になります。

正直なところ、過去2回の演奏は、私自身にとって決して満足のいくものではありませんでした。

変拍子、高音域、細かなパッセージ……。
技術的に難しい箇所が多く、本番中にも「ここは大丈夫だろうか」という恐怖心が頭をよぎっていました。

そのため、音楽に向かっていくというよりも、失敗しないように後ろ向きになってしまう。
そんな演奏になっていたように思います。

今回、この曲をもう一度演奏すると決めた時から、正直なところ「リベンジ」という気持ちがありました。

しかし、練習を始めるにあたって、過去2回とは曲との向き合い方そのものを変える必要があると感じました。

変拍子や高音域、細かなパッセージなど、もちろん技術的な準備は必要です。

でも、それだけではありません。

その難しさの奥にある、ニャタリの音楽的な意図をもっと深く探る必要があるのではないかと思いました。

例えば、ニャタリは4分の2拍子から8分の3拍子へと、何度も拍子を変化させます。

それを楽譜を見ながら「ここは4分の2拍子、次は8分の3拍子……」と頭で理解するだけでは、なかなか自然な音楽にはなりません。

なぜここで拍子が変わるのか。

その変化を自分自身の中で納得し、身体の感覚としても受け入れていく。

そうすることで、初めて自然な演奏につながっていくのだと思います。

この過程を丁寧に言葉で説明するのは、今の私の語彙力ではなかなか難しいのですが……。

最初は頭で考える。

そして、繰り返し音を出しているうちに、少しずつ心で感じるようになる。

最後には、それが身体の中に入って、考えなくても自然に音楽が動いていく。

そんな過程なのかもしれません。

昨日、今村さんとのリハーサルがありました。

前回の演奏と比べると、少しずつですが、音楽を身体と心で感じながら演奏できるようになってきたように思います。

ギターとチェロ、それぞれの音だけでなく、二つの楽器が重なった時の響きやハーモニーにも、以前より耳を傾けられるようになりました。

何より嬉しいのは、前回よりもアンサンブルそのものが楽しくなっていることです。

「失敗しないように」と身構えるのではなく、今村さんと一緒に音楽を作っていく。

その感覚が、少しずつ戻ってきているように感じます。

とはいえ、本番はまだこれからです。

気を緩めず、残りの時間もしっかり準備を重ねていきたいと思います。

3度目の正直。

今度こそ、この曲ともっと自由に向き合える演奏にしたいと思っています。

北村陽さんの思い出

北村陽さん、エリザベート国際コンクール5位入賞おめでとうございます。

最終結果が出るまで、インターネットで彼や他の参加者の演奏を聴いていました。どの方も素晴らしく、私の感覚からすると、まるで化け物のような技術と表現力を持った演奏家ばかりでした。

実は10年以上前、陽君(あえて昔の呼び方で失礼します)と接点があります。

私が宝塚のある音楽教室で教え始めた頃、前任のチェロの先生が突然退職されました。その先生に習っていた生徒の一人が、当時まだ小学校2、3年生だった北村陽君です。

先生がいなくなってしまったため、臨時で私がレッスンを担当することになりました。

ところが、既にサン・サーンスのチェロ協奏曲を見事に弾いており、私は大変驚かされました。正直なところ、レッスンをするというより、才能あふれる少年の演奏に感心していた記憶の方が強く残っています。

それ以上に印象的だったのは彼の人柄です。

子供の頃から大人顔負けの腕前でしたが、とても素直で礼儀正しく、周囲に対して自然な優しさを持っていました。

先日、久し振りに演奏する姿を拝見しました。

そこにいたのは、かつての天才少年ではなく、世界を舞台に活躍する立派なチェロ奏者でした。もちろん子供の頃から才能は抜群でしたが、その才能に甘えることなく努力を重ねてきたからこそ、現在の姿があるのだと思います。

エリザベート国際コンクールの結果については、ご本人にとって悔しさも残るものだったようです。しかし、まだ22歳。これからさらに進化し続けることでしょう。

今後の活躍を心から楽しみにしています。

そして、かつて小学生の陽君に驚かされた経験も、今では私にとって良い思い出になっています。

発表会で感じた事①


3月29日に発表会を行いました。
参加者は9名で、ほとんどの方にソロ演奏とアンサンブルの両方に参加していただきました。
レッスンではまずまずの仕上がりだったものの、本番で緊張してしまい、普段の半分も力を発揮できなかった方。
これまで伸び悩んでいたものの、今回殻を破り、今まで以上に素敵な演奏をされた方。
お一人おひとり、本当にさまざまでした。
発表会には、生徒さんのモチベーション向上や演奏の場の提供、そしてご自身とチェロとの向き合い方を振り返るという、大切な意味があります。
それと同時に、講師にとっても非常に重要な場です。
どれだけ本番直前まで頑張って練習し、しっかり仕上げて臨んだとしても、本番で思うようにいかないことはあります。
ですが、それは決して「できなかった」ということではなく、「本番という特別な環境で起こる一つの経験」なのだと感じています。
その経験があるからこそ、次にどう準備するか、どう向き合うかが見えてきます。
生徒さんは一人ひとり個性があり、まさに十人十色です。
それぞれに寄り添ったレッスンを心がけていますが、私自身もまだまだ反省点があります。
0から曲を仕上げるまでの技術的・音楽的なサポートはもちろんのこと、人前で演奏するという環境を見据えたレッスンの大切さを、今回改めて強く感じました。
緊張の中でも落ち着いて演奏できること。
たとえ間違えても止まらずに音楽を続けられること。
そういった力もまた、少しずつ身につけていけるものだと思います。
今回はそこまで十分に想定しきれず、具体的なアドバイスができなかったことが、私にとって大きな反省点でした。
ですが、この気づきもまた、次へ進むための大切な一歩だと感じています。
今回の発表会は、生徒さんそれぞれにとっても、そして私自身にとっても、「次に繋がる経験」になりました。
本番でうまくいったことも、思うようにいかなかったことも、すべてが前に進むための糧になります。
音楽は、そうして少しずつ積み重ねていくものだと思います。
これからも生徒さんお一人おひとりと向き合いながら、共に成長していけるよう、日々のレッスンを大切にしていきたいと思います。