北村陽さんの思い出

北村陽さん、エリザベート国際コンクール5位入賞おめでとうございます。

最終結果が出るまで、インターネットで彼や他の参加者の演奏を聴いていました。どの方も素晴らしく、私の感覚からすると、まるで化け物のような技術と表現力を持った演奏家ばかりでした。

実は10年以上前、陽君(あえて昔の呼び方で失礼します)と接点があります。

私が宝塚のある音楽教室で教え始めた頃、前任のチェロの先生が突然退職されました。その先生に習っていた生徒の一人が、当時まだ小学校2、3年生だった北村陽君です。

先生がいなくなってしまったため、臨時で私がレッスンを担当することになりました。

ところが、既にサン・サーンスのチェロ協奏曲を見事に弾いており、私は大変驚かされました。正直なところ、レッスンをするというより、才能あふれる少年の演奏に感心していた記憶の方が強く残っています。

それ以上に印象的だったのは彼の人柄です。

子供の頃から大人顔負けの腕前でしたが、とても素直で礼儀正しく、周囲に対して自然な優しさを持っていました。

先日、久し振りに演奏する姿を拝見しました。

そこにいたのは、かつての天才少年ではなく、世界を舞台に活躍する立派なチェロ奏者でした。もちろん子供の頃から才能は抜群でしたが、その才能に甘えることなく努力を重ねてきたからこそ、現在の姿があるのだと思います。

エリザベート国際コンクールの結果については、ご本人にとって悔しさも残るものだったようです。しかし、まだ22歳。これからさらに進化し続けることでしょう。

今後の活躍を心から楽しみにしています。

そして、かつて小学生の陽君に驚かされた経験も、今では私にとって良い思い出になっています。

発表会で感じた事①


3月29日に発表会を行いました。
参加者は9名で、ほとんどの方にソロ演奏とアンサンブルの両方に参加していただきました。
レッスンではまずまずの仕上がりだったものの、本番で緊張してしまい、普段の半分も力を発揮できなかった方。
これまで伸び悩んでいたものの、今回殻を破り、今まで以上に素敵な演奏をされた方。
お一人おひとり、本当にさまざまでした。
発表会には、生徒さんのモチベーション向上や演奏の場の提供、そしてご自身とチェロとの向き合い方を振り返るという、大切な意味があります。
それと同時に、講師にとっても非常に重要な場です。
どれだけ本番直前まで頑張って練習し、しっかり仕上げて臨んだとしても、本番で思うようにいかないことはあります。
ですが、それは決して「できなかった」ということではなく、「本番という特別な環境で起こる一つの経験」なのだと感じています。
その経験があるからこそ、次にどう準備するか、どう向き合うかが見えてきます。
生徒さんは一人ひとり個性があり、まさに十人十色です。
それぞれに寄り添ったレッスンを心がけていますが、私自身もまだまだ反省点があります。
0から曲を仕上げるまでの技術的・音楽的なサポートはもちろんのこと、人前で演奏するという環境を見据えたレッスンの大切さを、今回改めて強く感じました。
緊張の中でも落ち着いて演奏できること。
たとえ間違えても止まらずに音楽を続けられること。
そういった力もまた、少しずつ身につけていけるものだと思います。
今回はそこまで十分に想定しきれず、具体的なアドバイスができなかったことが、私にとって大きな反省点でした。
ですが、この気づきもまた、次へ進むための大切な一歩だと感じています。
今回の発表会は、生徒さんそれぞれにとっても、そして私自身にとっても、「次に繋がる経験」になりました。
本番でうまくいったことも、思うようにいかなかったことも、すべてが前に進むための糧になります。
音楽は、そうして少しずつ積み重ねていくものだと思います。
これからも生徒さんお一人おひとりと向き合いながら、共に成長していけるよう、日々のレッスンを大切にしていきたいと思います。

ミクローシュ ペレーニさん  その壱

2月後半に1週間ほど札幌へ行ってきました。 凄い雪だなと思っていると、この冬最後の大寒波だったようです。体感では1メートル近く積もっていました。

さて、今回の目的はハンガリーのチェロ奏者、ミクローシュ・ペレーニさんのマスタークラスを受講すること。 初日にオーディションがあり、ペレーニさんが直々に演奏を聴いてくださいます。 合格すると彼のレッスンを2回受講でき、リサイタルも聴くことができます。

これまで5、6回は受講したことがあるのですが、実は2年前、コダーイの無伴奏ソナタでオーディションに落ちました。 初めての不合格で落ち込みましたが、どうしても彼の得意なコダーイで受講したく、悩んだ末に今回再挑戦しました。 2年前は準備不足のまま臨んでしまい、オーディションで弾きながら「これは駄目だ」と後ろ向きになってしまった苦い記憶があります。結果は言うまでもありません。 どうしても、ペレーニさんとの最後の繋がりをこの記憶で終わらせたくありませんでした。 「ミスがあっても前向きな姿勢で、ペレーニさんの前でコダーイを演奏したい。結果よりもそれが大切だ」 その一心で今回のオーディションに向けて準備してきました。

さて、話は今回のオーディションに戻ります。 いよいよ出番となりました。 直前にペレーニさんから 「バッハのアルマンドを弾いてください」 と言われ、コダーイを弾く気満々だったので少し肩透かしをくらい、多少残念な気持ちになりました。 「分かりました。ただ、チューニングをコダーイ用にしているので少々お待ちください」 と答えると、 「それならコダーイをどうぞ」 と言われ、内心「よし!」と思い、1楽章冒頭から意思をしっかり持って弾き始めました。 Allegro maestoso ma appassionato. 力強い冒頭から、一昨年より確実に良くなっている実感がありました。 1ページ目が終わり、2ページに入り穏やかな曲調になったところで止められました。

バッハのアルマンドを指定されたのには理由があります。 受講曲は2曲提出する必要があり、コダーイ無伴奏ソナタとバッハ無伴奏チェロ組曲第1番を提出していたため、アルマンドを選ばれたのだと思います。

ちなみに2年前は、グダグダのコダーイの後に「バッハ1番のプレリュードを」と言われて弾きました。

今回の演奏後、まだ結果が出ていない中で、札幌コンサートホールKitaraから中島公園を歩いてホテルへ戻る時間は、とても清々しいものでした。 ペレーニさんの前で、自分なりに自信を持ってコダーイを演奏できたのですから。 長くなりましたので、今回はここまで。 「其の二」も書く予定です。